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コンピテンシーの歴史と運用と職能資格との違いについてまとめてみた:日本の人事を悩ます能力定義

コンピテンシーだの、能力要件だの、職能資格だのだの…。

人の能力を定義するような言葉に、日本の人事マンはずーっと悩まされてきていますよね。

ぼく自身も、能力を定義するようなプロジェクトを時々担当させていただきます。

そして毎回、あれこれと「人の行動」をイメージしながら作ります。

能力って、開発するのも大変ですが、どうやってその行動を切りとってラベリングするかっていうのも大変だったりしますね。

そのなかでも、特に日本の人事を悩ませてきているのが「コンピテンシー」ではないでしょうか。

実はこのコンピテンシーも、さまざまな歴史や背景があって今の日本の人事に浸透している部分があるようですね。

以前にもご紹介した、コンピテンシーと近しい概念のディメンションというのもあったりしますし(苦笑)。

今回は、「コンピテンシーの歴史と運用と職能資格との違いについてまとめてみた:日本の人事を悩ます能力定義」と題して、コンピテンシーの歴史や職能資格との違い、そして運用面についてご紹介していきます。

それでは、さっそくみていきましょう!

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もくじ

コンピテンシーの歴史

デイビッド・マクレランド(1917-1998)

ここでは、コンピテンシーの歴史についてご紹介していきます。

コンピテンシーという言葉を作ったのは、ハーバード大学の有名なマクレランド教授ですね。

マクレランド教授は、欲求理論(達成動機/権力動機/親和動機/回避動機)や、氷山モデルを生み出したアメリカの心理学者です。

(氷山モデルが一番有名な概念かも知れませんね)

1971年に彼が優秀な外交官とそうでない外交官の業績を差別化する要因を調査していました。

そして、その要因が「対人感受性」であることに気づいて名前を付けたのが「コンピテンシー」でした。

ここから、この難解な言葉の歴史がスタートするわけですねw。

人事においてのコンピテンシー導入当時は、社内の高業績者を集めて、その人たちにどんな違いがあるかを調べたりするのが始まりでした。

職務ごとや、優秀な人物の特徴などを明らかにしていったことから、コンピテンシー=「業績を差別化する要因」とか、「高業績者の行動特性」などと理解されていきます。

コンピテンシーと職能要件との違い

こうしてリスト化されたコンピテンシーの一覧をよくよくみると「職能要件」に似ていることに当時の日本人も気付きます。

そりゃそうなんですよ。

職能要件も、職務に必要な能力を抽出したものを一覧化したものですからw

職能資格要件とコンピテンシーの明確な違いは、その前提にありました。

職能資格は、一度その能力を身につけてしまえば保持され続けるという考え方です。

つまり、どんどん能力が積み上がっていくイメージですね。

一方でコンピテンシーの場合は、「その能力が業務で常に使われて発揮されなければ意味がない」というものでした。

つまり、持っているだけではダメってことですね。

こうしてコンピテンシーは、その後「発現能力(発揮能力)」という日本語の意味にたどり着きます。

(今じゃ発現能力とかあまり言いませんけど。)

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コンピテンシーの運用

それでは、最後にコンピテンシーの運用についてご紹介してまいります。

結果として、コンピテンシーは人事制度として定めれば終わりというわけにはいかなくなります。

現場の上司と部下との面談などの評価の場面で、「能力が発揮されているのか」をしっかり見極めていく必要があり、規定に定められるようになりました。

いくら上位職に上がったとしても、「能力を発揮しなければ減給も降格もある」という運用形態に人事制度も進化したきっかけになったかも知れませんね。

コンピテンシーが最も注目された1990年代においては、それ以前の「給料は年齢とともに上がり続ける」といった人件費の下方硬直性の改善にもつながったといえますね。

90年代に起こった変化として学習面について以下の記事でもふれていますので、合わせて参考にしてみてください。

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まとめ

いかがでしたでしょうか。

またまた実務においては何の役にも立たないウンチクをまとめてしまいましたねw

ただ、作ったらお終いではなく、いかにして「制度として運用するべきか」という面に影響をもたらしたのは、1つの功績かも知れませんね。

(それを失敗という人もまた多くいますけど)

今回は、「コンピテンシーの歴史と運用と職能資格との違いについてまとめてみた:日本の人事を悩ます能力定義」と題してご紹介してまいりました。

何かの参考にしてもらえたら嬉しいです。

それではまた次回。

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