「変化の時代」だと、かれこれず〜っといわれ続けてきていますが、まだまだ「変化の時代」は続きそうですね。
っていうか、言い続けないと人は変わらないってことの裏返しなのかも知れませんねw
そんな中で、以前の記事にも書きましたが、日本の組織や人事がもっとも大きな変化に直面したのが1990年代だったかと思います。
バブル崩壊ってやつですね。
では、具体的にどのような変化に直面したのか。
経済学者の島田晴雄さんは『日本の雇用-21世紀への再設計-』(1994年)の中で以下の4つの環境変化を提示していました。
バブル崩壊によって起こったメガトレンド
- 日本経済の長期的な成熟化傾向
- 円の価値の変化
- 人口と労働力の急速な高齢化
- 技術パラダイムの変化による情報改革の進展
確かに、この辺りの変化が給与や雇用慣行と人の部分に影響をおよぼしてきていますよね。
こうした問題意識から、『日本の雇用-21世紀への再設計-』では、「21世紀に向けての人材活用」として8つの提言を紹介してくれています。
そちらが以下ですね。
21世紀に向けての人材活用
- 高賃金の自覚
- 働き方の再設計
- 強制と管理から提案と支援へ
- 家庭と両立する企業
- 中高年の戦略的重要性
- 得点法の人事評価
- 独創性を育む人材戦略
- 世界の人的資源の活用
『日本の雇用-21世紀への再設計-』より
今回は、「終身雇用と年功賃金からの脱却シナリオ:日本型雇用慣行から抜け出す8つの道すじとは?」と題して、上記の内容について簡単にご紹介していきます。
ちょっとこれを見ながら、今のトレンドを振り返るきっかけにもしたいですよね。
それではさっそくみていきましょう!
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もくじ
日本型雇用慣行から抜け出す8つの道すじ
それでは、ここから「日本型雇用慣行から抜け出す8つの道すじ」をご紹介していきます。
改めて、その8つのシナリオとは以下ですね。
21世紀に向けての人材活用
- 高賃金の自覚
- 働き方の再設計
- 強制と管理から提案と支援へ
- 家庭と両立する企業
- 中高年の戦略的重要性
- 得点法の人事評価
- 独創性を育む人材戦略
- 世界の人的資源の活用
それでは、1つひとつ見ていきましょう!
高賃金の自覚
1つ目の「高賃金の自覚」についてです。
これは道すじというか、マインド・チェンジって感じかも知れませんけどね。
つまり、人材活用の観点から注意すべきだったのは、労働に対して生み出していた「価値」への意識だったということですね。
この当時の日本の労働者の皆さんに対して、「(バブル直前の)世界一の高賃金をもらうにふさわしい働きをしていたのか?」ってことだったといえるでしょう。
確かに、「出せば売れる(プロダクト・アウト)」っていう話はよく聞きますからね。
働き方の再設計
2つ目は「働き方の再設計」について簡単に解説していきます。
こちらは、働く労働者の皆さんの「時間価値」が世界で一番高いという事実を自覚して、それにふさわしい働き方を再設計すべきであるという提言だったようです。
ここから、かなり「時間」という意識も強くもたらされたのではないでしょうか?
例えば1時間あたりの時間単価とか、会議は1時間まで、といった働き方のルールなども変化してきましたね。
強制と管理から提案と支援へ
3つ目の「強制と管理から提案と支援へ」について、ここでも簡単に解説していきます。
ここでは、若い人たちの行動や考えがわからないと不満にいう以前に、若い人たちに大きな仕事と責任をしっかり与えようという提言がされています。
それを支援することで、大きな成果を生み出す可能性が非常に高いのだということをいわれています。
確かに、これまでのビジネス経験から生まれる「固定観念」が一番成功しない時代でしたからね。
こういった変化のときに、若い人を活用するのは成長戦略的にも正しかったのかも知れません。
(ただ、この時代から就職氷河期というのも始まっていますので、若手不在の企業や部署も多かったことでしょう)
家庭と両立する企業
4つ目の「家庭と両立する企業」についてです。
言い換えると「女性活用」ですね、これは。
もっと女性が働きやすい職場環境にすること。
そのためにも「女性を平均値で扱わないこと」「産休・育休の整備」「出産後の職場復帰」などの女性にとっても働きやすい職場環境についてもここで提言されていました。
これとセットで考えなければいけなかったのが、次の「中高年の戦略的重要性」ですね。
中高年の戦略的重要性
5つ目の「中高年の戦略的重要性」は今もまさに課題として起こっている会社さんも多いことでしょう。
具体的には50代後半〜60代の人々です。
これ以降、シニアのキャリアプランなどの教育トレーニングなども盛んに行われるようになったりしましたね。
また、2000年代に控えていた「団塊世代大量退職」なども見据えて、「技能伝承」なども潜在的に課題として抱える企業も多かったはずですからね。
得点法の人事評価
6つ目の「得点法の人事評価」は4つ目、5つ目とも関連してきますね。
特に、中高年労働者の活性化をはかるためには、目標や責任を明確にしなければいけませんでした。
だからこそ、得点法の評価を心がけるよう、日常の上司のコミュニケーション・スキルの重要性が一気に増した時代だったかも知れませんね。
この頃はよく「エンパワーメント」という言葉や「インタラクティブ・マネジメント」といったキーワードで、人材マネジメントを促すトレンドもありましたね。
積極的に部下と会話をして、行動を引き出すというのが、この頃から日本でも浸透しはじめたはじめた頃かとおもいます。
独創性を育む人材戦略
7つの「独創性を育む人材戦略」について。
こちらは、「前例主義を排した意思決定方式」の確立をうたっていましたね。
そのほかにも、グループ表彰よりも個人表彰の重視、社内ベンチャー制度などの創設なども提言されていました。
このようにして「独創性」のある人材がうまく育って、活躍できる風土をつくる必要があった時代ですね。
この当時、これを後押ししたのが「ビジョナリー・カンパニー」のような、未来に目を向けさせた考え方でした。
ただ、やっぱり「前例主義を排した意思決定方式」というのは、なかなか一筋縄ではいかないな、というもはぼく個人の感想でもあります。
個人の成功体験や他社の成功事例、過去のエビデンスを重視しがちな意思決定はまだまだありますよね。
世界の人的資源の活用
最後に8つ目の「世界の人的資源の活用」です。
世界で優秀な人に、日本企業でもっと働いてもらおうという物でしたね。
そのためにも、「目標の共有」、「意思決定プロセスの透明化と情報開示」「ルールの明確化」が必要だともいわれていました。
グローバル化や多様化などとは声高にいわれていますが、それを成すために必要な「目標の共有」「意思決定プロセスの透明化と情報開示」「ルールの明確化」って、全然まだまだできていないなっていうのが感想です。
(けっこう情報を隠したがりますよね、何でもw)
終身雇用と年功賃金からの脱却シナリオ
1990年までの日本型雇用慣行、日本企業にメスを入れたのが、この「21世紀に向けての人材活用」だったのかも知れませんね。
何もしなくても上にあがる構造を改革しないと、中高年や女性も追い出されてしまう問題も当時はあったのかも知れません。
また、労働と生産のバランスも維持できない為替レートの変化の影響もあったでしょうね。
そういう意味では、終身雇用と年功賃金からの脱却シナリオとして機能した提言だったかも知れませんね。
まとめ:参考書籍の紹介
いかがでしたでしょうか。
1994年当時から、国内の労働市場の縮小が見られるなかで、企業の中でますます求められていったのが「一人ひとりの能力を適切に発揮させる環境と制度」、そして「一人ひとりの能力を見極める力」だったのかも知れませんね。
アセスメントやコンピテンシーなども、この当時よくいわれた人材マネジメントの施策でしたものね。
まだまだ、不断の努力が必要そうです…。
最後に、経済学者の島田晴雄さんは『日本の雇用-21世紀への再設計-』も以下にのせておきますので、よかったら読んでみてくださいね。
今回は、「終身雇用と年功賃金からの脱却シナリオ:日本型雇用慣行から抜け出す8つの道すじとは?」と題してご紹介してまいりました。
それでは、また次回。
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