以前、日本の人事制度の変化についてご紹介してみたことがありました。
その後で、「日本の人材の能力的な変化は?」というような疑問の声も実はいただいていました(ありがたいことですね)。
そういった事もあり、今回は「日本の課長やマネジャーの能力の変化」についてご紹介してみたいと思います。
確かに、あまり人材の能力の変化を解説している専門書などもほとんどないんですよね。
アセスメントのベンダーさんとか、こういったレポートを出すだけでもかなりいいと思うんですけど。
(とはいえ、企業側もコロコロと能力要件を変えたりする事情もあるので、定点観測しづらいというのが本音でしょう)
なので、ちょっと知ってる書籍を参考にご紹介してみたいと思います。
今回は、「日本の課長やマネジャーの能力変化:80年代〜00年代の能力から見る「求められる人材象」」と題してご紹介してまいります。
「あの時代の管理職を経験してきてるから、あの人はああなんだな…」と、ちょっとした妄想を膨らませながら読んでもらえると、きっとこの記事も面白いかも知れませんね。
それでは、早速みていきましょう!
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もくじ
日本の課長やマネジャーの能力変化
ここでは、年代別のアセスメントデータをもとにして作られた、各年代の能力要件の比較をみていきましょう。
※ちなみに、これは昇進昇格試験などをアセスメント・センター・メソッド(アセスメント研修と言われたりしますね。シミュレーション型のアセスメントのことです)を運用してきた企業のデータをもとに作られています。
以下の図では、課長選抜のアセスメントで、高得点と低得点を示した項目を6つずつを抜粋したものを掲載しています。
ちょっとずつ解説していきますね。
いつの年代も高得点に入る情報把握力・バイタリティ・判断力
いつの年代も高得点に入る情報把握力・バイタリティ・判断力の3つですね。
この3つの能力要件から分かる日本の課長やマネジャーの特徴はどんな人だと思われますか?
多分、以下のような人ですね。
日本の課長やマネジャーの特徴
「ドキュメントや議論の中から、ポイントとなる情報をがんばってピックアップして、そこから得た情報をもとに、トータルで判断できるように整理する思考力(知力)を持っている。かつ、仕事の活動も粘り強く持続的に取り組める人」
言い換えると、こういう人でないと、日本では課長やマネジャーになれなかったとも言えるかも知れませんね。
ちなみに、調査によるとバイタリティは好景気の時は高く、不況期には低くなる傾向もあるようですな。
逆に、ストレス耐性や執着性は不況期には高く出る傾向もあります。
低得点はいつの時代もリーダーシップと計画組織力
一方で、低得点の方もみていきましょう。
80年代と90年代の低得点はリーダーシップ・計画組織力・そして分析力ですね。
そして、「戦略力」「変革力」「適応力」が低得点に入ってきていますね。
ただ、2003年からのデータで見ても、リーダーシップと計画組織力は変わらず低い状態ですね。
ちなみに、リーダーシップと計画組織力の定義だと、恐らく以下のような定義です。
リーダーシップの定義
個人または集団に対して、目指す方向や方針を示して働きかけ、目標達成に導き、影響を与える能力
(個人または集団を達成すべき目標の方向に動かして、さらに、自分の考え方や進め方を受け入れさせ、成果に結びつけることのできる人の能力ですね。)
計画組織力の定義
自分自身の活動やグループの活動を効果的に計画し、組織立てて進めていく能力。リソースを最大限に活用し、組織的な計画・立案を行うこと。
(つまり、目標の設定、優先順位、人的資源の計画、アクションプラン、予算や時間配分などを適切に行う人の能力です。結構苦手な人、実は多いですね)
リーダーシップは何となくわかりますが、計画組織力は、その能力が重要だという認識を持っている人そのものが少ない印象ですね。
チームを采配を考えること、メンバー同士でいかに座組みを組んでいけるか、などの発想。
こういった思考を巡らせることがないため、あまり啓発されていませんね。
変化した課長やマネジャーの求められる能力や人材モデル
こうやって見てみると、この当時のビジネス環境がどう変化してきたかも何となく見えてきますよね。
それに対して、課長やマネジャーたちにどんな能力を期待し始めたのかも推察できます。
変化したポイントは以下ですね。
- 成果の達成へのスピード
- フラット型組織への移行
- 成果主義への揺らぎ
以下でポイントについて簡単に触れていきます。
成果の達成へのスピード
一つ目は、成果達成へのスピード対応でしょうね。
景気の影響をたくさん受けてきたビジネス環境の中で、企業の競走も激しくなり、生き残りをかけてますます企業は目標達成に力を入れた時代だったというのはよくわかります。
最近だと、むしろこのスピード対応というのはチームにおいて重要視されてきていますね。
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フラット型組織への移行
早く成果を出すために、組織構造を見直す、従来のピラミッド型組織からの変革というのもよく取り組まれた時代だったと思います。
(フラット型組織みたいなの、流行ったんですよ)
このフラット型の組織では、ゼネラル・マネジメント層と呼ばれる人たちと、執行役員の層が経営全体をみるようになるという構造もありました。
逆に、実務に近い意思決定は、若い経営者や管理者層が現場に積極的に関わって活動するようになりましたね。
成果主義への揺らぎ
この時代から、旧態依然とした日本型人事制度から成果主義型に移行した企業も多かったです。
ただ、一気に進んだ成果主義が、2005年くらいから反動が生じてなのか、対人スキルやパートナーシップのような「対人関係構築」系の能力要件も評価項目として加わるようになったと言われています。
(確かに、この時代「リーダーシップ研修」という名の「コーチング研修」って増えてましたからね)
今の時代も同じですね。
生産性追求の反動で、人間性のトレンドがきているような気がしています。
だからエンゲージメントが流行ってるんでしょうけど。
エンゲージメントを高める5つの鍵とは?心理的安全性を高める方法【チーム運営の基本です】
まとめとおすすめの書籍
いかがでしたでしょうか?
そして、2010年〜今に至っては、皆さんはどのように捉えていますか?
今後、どのような変化がビジネスで起こり、その時にどういう人物が課長やマネジャーに必要でしょうか?
そんなことも妄想しながら、もう一度読み返してもらえたら嬉しいですね。
今回は「日本の課長やマネジャーの能力変化:80年代〜00年代の能力から見る「求められる人材象」」と題してご紹介してまいりました。
ちなみに、今回はこの「日本の課長の能力」という書籍を参考に書かせていただきました。
ぜひこちらもチェックしてみてください。
それではまた次回!
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